朝日新聞デジタル:(私の視点)一票の格差 議員ごとの持ち票制で解消 高野克則 - ニュース を見て [メール投稿]
朝日新聞デジタル:(私の視点)一票の格差 議員ごとの持ち票制で解消 高野克則 - ニュース
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ネット上だとログインしないと読めないが、紙面には次のように書いてある。
そこで、選挙区の区割りを変更せず、「一票の格差」を解消するアイデアを提案したい。一言でいえば、議会における議員の「一票の格差」を認めるのである。
選挙区ごとに有権者数は正確に分かっている。各議員は自分の出身選挙区の有権者数を「持ち点」とし、議会で議決する際には議員ごとの「持ち点」を集計して多数決をするのである。こうすれば、選挙の際に「一票の格差」は小数点のレベルでも生じない。
私も以前に似たことをツイートしたことがある。
@self7777 選挙での一票の格差を解消しないのなら、国会議員の国会での賛否の票に得票数による重み付けをしたらどうだろう?大量の有権者の票で当選した人の国会での一票を重くする感じ。
— 正己さん (@self7777) 2013年2月27日
Googleで検索してみたら、他にも同じようなことを考えている人がいるようだ。
私も思いついた時は良いかもと思ったのだが、すぐに問題点が見つかって、意見を保留することにした。
まず、所謂「一票格差」というのは次の図のような状態である。
選挙区Pの有権者数は20人で、選挙区Q、Rの有権者数10人よりも多く、それぞれ1人しか当選できないのなら、選挙区Pで1人の議員を選ぶ有権者の票の価値が選挙区Q、Rの1/2しかない(選挙区Q、Rの一票の価値が選挙区Pの2倍)ということらしい。選挙区Pで当選した議員が有権者20人の代表で選挙区Q、Rで当選した議員がそれぞれ有権者10人の代表なのに、議会ではそれぞれ同じ1票の価値しかない。
そうは言っても、得票数で見ると、選挙区Pで当選した議員は10人の代表で、選挙区Qの議員は4票、選挙区Rの議員は2票の代表に過ぎないと思うが…。
それで議会では図のように一票の価値が大きい選挙区から当選した議員の意見が通りやすくなってしまう。
そこで、高野克則さんなど持ち票制を支持する人たちは議会での議員の一票の価値を当選した選挙区の有権者数に比例するようにしたら良いのではないかと考えているようである。
例えば上の図では、選挙区Pで当選した議員の持ち票は20票、選挙区Q、Rで当選した議員の持ち票は10票で、政策Aの賛否では20票対20票で同点になる。
ただ、私はこれでも問題が残ると考えていて、その前に所謂「一票の格差」を解消した場合を考えてみる。
以前にもツイートした(参照)のだが、例えば、所謂「一票の格差」を解消して下の図のようになったとする。
選挙区P、Q、Rで当選した議員はどこも有権者数10人の選挙区から選ばれている。所謂「一票の格差」は無い。しかし、政策Aについて、国民は賛成8票、反対16票で反対の方が多い。当選した議員が背負った国民の意思は賛成6票、反対8票で反対の方が多い。しかし、議会では反対1票、賛成2票で政策Aは可決する。要するに、所謂「一票の格差」を解消しても国会は国民の意思を正確には反映できないのである。
では、持ち票制にしたらどうなるか。有権者数を持ち票にすると下の図のようになる。
政策Aに対する国民の賛否は先ほどと同じ。政策Aに対しては反対の方が多い。しかし、議会では反対10票、賛成20票で政策Aは可決する。所謂「一票の格差」を解消したので、持ち票制にしても結果が同じなのは当然だが、結局は持ち票制にしても国会は国民の意思を正確には反映できない。
では、得票数を持ち票にしたらどうだろうか。上の図のような得票数だと、期待通りになってしまうので、選挙区Rの得票数を2票から5票に増やして、下の図のようにした。
政策Aについて、国民は賛成11票、反対16票で反対の方が多い。選挙区Pで当選した議員は持ち票8票で反対。選挙区Qで当選した議員は持ち票4票で賛成。選挙区Rで当選した議員は持ち票5票で賛成。議会では反対8票、賛成9票で政策Aは可決する。国民の意思は反対の方が多いのに、政策Aは可決する。要するに、出身選挙区の有権者数を持ち票にしても、得票数を持ち票にしても、持ち票制では国会は国民の意思を正確には反映できない。
そういうわけで、所謂「一票の格差」を解消する代わりに議員の一票に格差を付けて持ち票制にすれば良いというわけではない。
さらには、所謂「一票の格差」を解消したり、持ち票制にしたりするなどして、国民の多数決の意思が国会に反映されるようにしたとしても、小数派の意見を無視して良いわけではなく、所謂「一票の格差」の議論では、その辺もちゃんと考えてほしい。