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公職選挙法 第十一条「次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。一 成年被後見人」は違憲 [メール投稿]

公職選挙法
(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条  次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一  成年被後見人


 今日2013/3/14に成年被後見人の選挙権を奪う公職選挙法第11条の規定は憲法違反だという判決が出た。とても嬉しい。
成年後見制度で選挙権喪失 違憲判決 NHKニュース
病気や障害などで判断力が十分でない人に代わって財産を管理する「成年後見制度」で、後見人がつくと選挙権を失う法律の規定について、東京地方裁判所は「憲法に違反する」という初めての判決を言い渡しました。

茨城県牛久市の名兒耶匠さん(50)は、ダウン症で知的障害があるため、判断力が十分でない人に代わって財産を管理する成年後見制度を利用して、父親が6年前に後見人となりました。
しかし、公職選挙法では後見人がつくと選挙権を失うと規定されているため、「一律に権利を奪うのはおかしい」と国を訴えていました。
14日の判決で、東京地方裁判所の定塚誠裁判長は、「憲法に違反する」として、公職選挙法の規定は憲法違反だという判断を示しました。

成年後見で選挙権喪失は違憲 東京地裁判決  :日本経済新聞
 訴えていたのは、ダウン症の名児耶(なごや)匠さん(50)。同制度を利用して07年、父親が契約などの法律行為を代理できる後見人となったため、選挙で投票できなくなった。

 公選法は「被成年後見人は選挙権を有しない」と規定。訴訟では(1)能力によって国民の選挙権を制限すべきか(2)制限が必要だとしても、成年後見を受けているかどうかを基準とすべきか――などが争われた。

 訴訟で原告側は「憲法は個人の尊重や法の下の平等を保障しており、能力による選挙権の制限は許されない」と主張。「仮に制限が必要だとしても、財産管理能力が問題となる成年後見制度の利用の有無を基準とすべきではない」と訴えた。

公選法規定は「違憲」 成年被後見人の選挙権剥奪 東京地裁 - MSN産経ニュース
 成年後見人が付くと選挙権を失うとした公職選挙法の規定は、参政権を保障した憲法に違反するとして、茨城県牛久市のダウン症の女性が国に選挙権があることの確認を求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。定塚誠裁判長は規定を違憲と判断、原告側勝訴の判決を言い渡した。

 公選法11条1項1号は、後見開始の審判を受けた成年被後見人について「選挙権を有しない」と定めている。成年後見制度をめぐり公選法規定の合憲性を問う訴訟はさいたま、札幌、京都の3地裁でも起こされており、判決は初めて。

 記事は他にもあって、とりあえず一部を引用した。
 しばらくすればもっと詳細な記事が出て来るのではないかと思うし、そうでなければいけない。
 成年後見制度は財産の管理に関する法律だったはずで、財産を管理する能力と投票する能力は別。財産を管理する能力が無いことを理由に選挙権を奪うのは異常だった。次の参院選の前に公選法11条1項1号が削除されることを願う。

追記:
 判決文要旨がネットで見つからないので、代わりに日経新聞の記事から引用する。
成年後見で選挙権喪失は「違憲」 東京地裁が初判断  :日本経済新聞
 訴訟では(1)知的障害などを理由に選挙権を制限すべきか(2)制限が必要だとしても、成年後見を受けているかどうかを判断基準とすべきか――などが争われた。

 判決理由で、定塚裁判長は「様々な境遇にある国民がどんな施策がされたら自分たちは幸せかなどの意見を、主権者として選挙で国政に届けることが民主主義の根幹」と憲法の理念を説明。国が国民の選挙権を制限できるのは「やむを得ない事由がある極めて例外的な場合に限られる」と判断基準の枠組みを示した。

 判決は、成年後見制度の趣旨に言及。利用基準は「自己の財産を管理・処分する能力の有無」とし、選挙権を行使する能力とは異なると指摘した。

 その上で「被後見人とされた人が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけではないのは明らか」とし、「一律に選挙権を奪うことが『やむを得ない』とはいえない」と述べた。

 さらに、被後見人から選挙権を奪うことは、自己決定の尊重という成年後見制度の趣旨や、精神障害者らの選挙権制限を見直す国際的な潮流に反すると言及。「憲法が保障する選挙権の制限は原則として許されない。やむを得ない事情がないのに、国民の選挙権を制限する立法は、裁量の限界を超えて憲法に違反する」と結論付けた。

 NHKのニュースも詳細に分かりやすくなった。
成年後見制度で選挙権喪失 違憲判決 NHKニュース
判決で東京地方裁判所の定塚誠裁判長は「選挙権は憲法で保障された国民の基本的な権利で、これを奪うのは極めて例外的な場合に限られる。財産を管理する能力が十分でなくても選挙権を行使できる人はたくさんいるはずで、趣旨の違う制度を利用して一律に選挙権を制限するのは不当だ」と判断し公職選挙法の規定が憲法に違反するという判決を言い渡しました。
最後に裁判長は名兒耶さんに「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください。堂々と胸を張っていい人生を生きてください」と語りかけました。

 「財産を管理する能力が十分でなくても選挙権を行使できる人はたくさんいるはずで、趣旨の違う制度を利用して一律に選挙権を制限するのは不当」というのは全くその通り。これに対して妥当な反論は存在しない。

追記(2013/3/15):
 毎日新聞で判決要旨がアップロードされていた。朝日新聞はネットで全部を読めない。
成年後見制度訴訟:判決要旨- 毎日jp(毎日新聞)
成年後見制度訴訟:判決要旨

毎日新聞 2013年03月15日 東京朝刊

 成年後見制度を巡る14日の東京地裁判決の要旨は次の通り。

 <主文>原告が次回の衆議院議員選挙及び参議院議員選挙において投票をすることができる地位にあることを確認する。

 <当裁判所の判断>憲法の趣旨に鑑みれば、国民の選挙権またはその行使を制限することは原則として許されず、制限をすることが「やむを得ない」と認められる事由がなければならない。制限することなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難と認められる場合でない限り、「やむを得ない事由」があるとはいえず、このような事由なしに選挙権を制限することは憲法に違反するというべきである。

 被告が主張するように、選挙権を行使する者は行使するに足る能力が必要であるとし、事理を弁識する能力を欠く者に選挙権を付与しないとすることは、立法目的として合理性を欠くとはいえない。

 しかしながら民法は成年被後見人を、事理を弁識する能力を欠く者として位置づけておらず、一時的にせよ事理弁識能力を回復することを予定して種々の規定を置いている。成年被後見人が行った法律行為は取り消されるまで有効とし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消すことさえできないとし、民法が成年被後見人を「事理を弁識する能力を欠く者」とは異なる能力を有する存在と位置付けていることは明らか。

 また、後見開始の審判の際に判断される能力は「自己の財産を管理・処分する能力」の有無で、これは選挙権を行使するに足る能力とは明らかに異なる。

 このように成年被後見人とされた者が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけではないことは明らか。翻って考えるに、そもそも後見開始の審判を受け、成年被後見人になった者も、我が国の「国民」である。国民には障害を持って生まれた者、不慮の事故や病によって障害を持つに至った者、老化に伴って判断能力が低下するなどさまざまなハンディキャップを負う者が多数存在する。そのような国民も我が国の主権者として自己統治を行う主体であることはいうまでもない。

 確かに選挙権を行使するに足る能力を有しない者に選挙権を付与すると、不正な働きかけや、不公正、不適正な投票が行われることがあり得る。しかし、それらが相当高い頻度で行われ、国政選挙の結果に影響を生じさせかねないなど、成年被後見人から選挙権を剥奪しなければ選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難とは認め難い。

 また被告は、選挙権の行使をするに足る能力を個別に審査する制度を創設することは事実上困難であるから成年後見制度を借用せざるを得ない旨の主張をするが、実際の運用に困難が伴うからといって、制度趣旨を異にする成年後見制度を借用して被後見人から一律に選挙権を奪うことが「やむを得ない」とはいえない。

 さらに、成年後見制度の沿革を見ると、禁治産制度が設けられた明治時代とは社会状況に大きな変化が生じたことに鑑み、ノーマライゼーションという新しい理念に基づいて設けられたもので、禁治産者について他の法律で設けられていた欠格条項の多くが撤廃された。海外を見ると、同様の新しい理念に基づいて法改正が行われた。我が国の成年後見制度はこのような潮流の中で、新しい理念に基づき制度化されたもので、選挙権の制限についても成年後見制度の趣旨にのっとって考えられるべきである。成年被後見人から選挙権を奪うことは制度の趣旨に反し、国際的な潮流にも反する。

 以上のとおり、成年被後見人に選挙権を付与しないとした公選法の規定は、国民に保障された選挙権に対する「やむを得ない」制限ということはできず、憲法に違反するものであり、無効であるといわざるを得ない。


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